その日暮らしの記

日々思うこと

即位の礼を寿ぐ

 先月の22日に新天皇即位の礼が執り行われた。昭和生まれの私にとっては昭和天皇、先帝陛下、今上陛下と3つの時代を経験することになる。

 その日はいつも通り仕事だった。即位の礼の日ということで休日になり、しかし人様が休みの時が稼ぎ時のセクション、夜にでも動画視聴すれば良かろうと思っていた。時代は移り、前もっての予約録画も不要、日々行き当たりばったりで生活している私にとっては良い時代になったものだ。

 仕事中ふと隣室に行くとそこではテレビがついていて、いよいよ即位礼正殿の儀が始まるところだった。先程まで降っていた雨が止み、薄日さえ差している様子。以前京都御所で拝見した高御座が磨かれてそこにあり、引幕が引かれて宣言をされる天皇陛下は皇太子時代とは別の何かを体現されていた。

 今まで何度もテレビなどで拝見して、お話のされ方や佇まいは承知していたけれど、即位の宣言をされるお声やお姿は立派な古式の衣装のせいではなく、一国の元首としてやはり確固とした威厳を私に感じさせた。

 地位が人を作るなどということも巷間言われるが、天皇になるべくして育てられたとはいえ、ふとした瞬間に感じられた皇太子時代の頼りなさはどこかへ吹き飛んでしまわれて堂々とされている。そしてすっと立っておられるのだが、軍隊式の直立ではなく、極々わずかに首を傾けられておられた、その角度が誠に絶妙でこちらに親しみを感じさせるように計算されている。明瞭に発声されるそのお声も文句のつけようがなく本当に堂々とされていた。

 陛下とはほぼ同世代の私は同じ時代を過ごしてきて、どうかすると少し陛下を軽く見るようなところもあったのだが、今となってはとんでもなく恐れ多いことだとその時はっきり思った。そしてそう思わせるだけの何かがあった。それは伝統に裏付けられた権威なのだろう。

 2つ来ていた台風は一つは消え、一つは大幅に進路を変え、雨は止み、虹まで掛かったと聞く。新しい令和という時代、日本という国が益々栄え、幸せに暮らせますように。